死刑制度に関連して最も激しい議論が行われている存廃論ですが、存置派の論拠のひとつとして感情が挙げられます。
今回は感情に焦点を当てて存廃を説明します。
贖罪としての死刑
思想家のカントは著書で「人を殺害したのであれば、(その犯罪者は)死ななくてはならない。これには正義を満足させるどのような代替物もない。苦痛に満ちていようとも生きている ことと死とのあいだに同等といえるところはな(い)。」と述べています。
宗教観と見る復讐としての死刑
キリスト教の教えの中には、復讐の手段として死刑を肯定する内容も含まれています。
旧約聖書には「人を打って死なせた者は必ず死刑に処せられる」とあり、このようなハンムラビ法典的な原理は旧約聖書にたびたび見られるようです。また、新約聖書にあるパウロ書簡(ローマ信徒への手紙)にも、刑罰殊に死刑を肯定するものが複数含まれています。
フランスの思想家ド・メーストルは、死刑は神の法を全うするために王に与えられた武器だとして死刑に賛成していました。
17世紀に入りヨーロッパに啓蒙主義が根付くまでは、キリスト教を基調とした神の代理人としての死刑肯定思想が広く残りました。
被害者感情に寄り添う
平成元年に行われた世論調査で「死刑もやむを得ない」と答えた者のうち、その理由として「死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」と答えた者は最多の56.6%でした。日本の宗教観は現世主義が強いため、死をもって罪を償うという意識は薄く、その一方で被害者やその遺族の置かれている状況を気にかけ、死刑存置派の立場をとる傾向があります。
過去の凶悪事件の中には当事者でなくとも感情を揺さぶられる事件がいくつもあり、そういった事件が死刑存置の世論を形成していることは想像にかたくありません。
凶悪犯罪の紹介記事も改めて出すので、被害者感情について考える機会を少しでも持てればと思います。
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