EUにおける人権思想と死刑廃止

EU(欧州連合)は人権思想の発祥と言われるヨーロッパを中心に、27カ国(2020年イギリス脱退後)が加盟する機関です。

EUの人権に関する法的枠組み

  • 1993年 EU条約(マーストリヒト条約)
  • 2000年 EU基本権憲章調印
  • 2009年 リスボン条約(EU基本権憲章に法的拘束力付与)

EU設立の際に発効されたマーストリヒト条約には人権についての記述があります。これはEUの前身となる欧州経済共同体では明文化されていなかった内容です。

単に経済分野における結びつきだけではなく、ヨーロッパ全体で人権意識においても歩調を整えていこうという進展が見えます。

そしてEU基本権憲章では自由権も含めた基本的権利がまとめられました。

また加盟国に重なりがありますが、EUとは異なる機関で「欧州評議会」という機関があります。

欧州評議会では議定書で「死刑の完全廃止」を規定しています。

加盟国における死刑廃止までの流れ

イギリスでは1948年に初めて死刑を廃止する法案が提出されたものの、議会の反発に押されて否決されました。しかしその後に死刑が絡む誤判事件が相次ぎ、国民の間にも問題意識が芽生えはじめました。

1956年に再度提出された法案は否決されたものの、政府は死刑制度の廃止を検討し、1965年には死刑執行停止を定めた法律が制定されました。その後1998年に戦時の犯罪を含めた全てに対しても死刑執行が禁止され、イギリスでは全面廃止になりました。

フランスでも死刑を廃止する法案が数度否決されたものの、廃止派の議員が大統領に就任し、ついに法案が可決されました。

EUが死刑制度を廃止した理由

先述したようにヨーロッパでは人権思想が強く根付いていたため、犯罪者に対しても人権の尊重を守るべきだという考えがあります。

加えて死刑は執行してしまうと全く取り返しが付かなくなってしまう「不可逆性」を孕んでいます。各国では誤判が相次ぎ、無実にも関わらず刑が執行されてしまった死刑囚もいます。死刑は禁固などの自由刑と違い、後から遺族に補償したところで囚人本人に対しては全く補償にならないのです。

こういったケースを回避する唯一の方法が死刑制度の廃止なのです。

死刑には犯罪抑止効果を期待できるという考えもありますが、実はこれも首肯し難いのです。

死刑制度の存置と廃止が州ごとに定められているアメリカでは、死刑制度を存置している州の方が殺人事件の発生率が高いというデータもあります。

さらに刑罰の目的についても、本人を更生させ社会復帰させることにあるとEUは考えているため、死刑は刑罰の目的に合致しないというのも理由にあります。

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