【死刑裁判】飯塚事件

飯塚事件は福岡県飯塚市で少女が他殺死体となって発見された事件です。事件当時54歳であった男が逮捕され、殺人、略取誘拐、死体遺棄の容疑で起訴されました。最高裁まで争いましたが死刑が確定し、死刑確定の2年後に死刑が執行されました。

本事件については冤罪疑惑が取り沙汰されており、今でも冤罪を巡って再審請求がなされています。

事件の概要

1992年2月20日、福岡県飯塚市で小学校1年生の女児2名が登校途中に失踪し、翌21日に隣接する甘木市でいずれも遺体となって発見されるという幼児強姦殺人事件が発生しました。また、翌22日に遺体発見現場から数キロ離れた場所から、被害者の遺留品が発見されました。

その後、遺留品発見現場付近、被害者の失踪現場付近で自動車を目撃したという証人が現れ、これに該当する車両は福岡県内で127台ありましたが、被告人がそのうちの1台を使用していたことから嫌疑をかけられました。

被告人は、1994年6月23日に逮捕されましたが、一貫して犯行を否認し、無実を訴えていました。

今もなお冤罪の可能性が残る

詳しい事件の経緯等はWikipediaや様々な外部サイトに紹介されているため、ここでは省略します。

この事件のポイントは、冤罪の疑いが濃いことです。

以下は事件を担当した徳田靖之弁護士と岩田務弁護士の発言を元に、ポイントを抜粋して纏めました。

有罪の根拠は主に2つ

当該事件では検察側が主張する根拠が2点ありました。

1つめは目撃証言。2つめにDNA鑑定です。

ランドセルや着衣等の被害者の遺留品が発見された周辺で、不審な車と人を見たという目撃証言がありました。その車が被告人の所有する車と似ていたというのが、1つめの大きな証拠とされました。

記事の「事件の概要」の部分に記載したように、該当する車両は福岡県内で127台あったとのことですが、何故被告人に嫌疑がかけられたのでしょうか。

それは車両の特徴にありました。目撃証言によると、「車体にはラインが無かった」とあります。被告人の所有する車両は元は派手なラインが入っている車種ですが、これが消されていました。

2つめの証拠とされたDNA鑑定ですが、実は現在行われているDNA鑑定とは別物です。

当時はDNA鑑定がまだ発展途上の段階で、別人であっても鑑定結果が一致してしまうことがありました。しかしそのことは当時知られていないため、最有力な証拠として扱われました。

証拠の疑念

目撃者の「車体にはラインがなかった」という証言には、どこか不可解さを感じるかと思います。車両の派手なラインが後から消されたものだというのは、目撃者は恐らく知りません。

証言の内容に関しても、二転三転したり、あまりに不自然な状況であったりしました。

これだけでは憶測の域を出ませんが、捜査員によって誘導された証言の可能性があります。

また、先述したように当時のDNA鑑定の精度は高くありません。同時期に争われていた「足利事件」でも同様のDNA鑑定が行われ、証拠として扱われていましたが、足利事件ではDNA鑑定の精度に問題があったとして証拠能力が否定されました。

しかし飯塚事件では、足利事件と同様のDNA鑑定方法であったにも関わらず、そのまま死刑が執行されてしまったのです。

杜撰な鑑定

足利事件では最新の方法で改めて鑑定を行うことで真犯人を特定できましたが、飯塚事件はそうもいかなかったのです。というのも、当初の鑑定で検体をほとんど使い切ってしまい、再鑑定ができるほどの検体が残らなかったというのです。

帝京大学の石山教授によると、100回以上のDNA鑑定をできる量があったはずとのことですが、科警研がたった3回の鑑定でほとんど使い切ってしまったと言うのです。当時の鑑定記録等は残念ながら処分されており、なぜ3回しか鑑定しなかったかは明らかになりませんでした。

このような理由で、最新の方法での改めてのDNA鑑定が不可能になってしまい、真相は明らかになっていないのです。

さらに鑑定結果も改ざんされた物なのではないか、と徳田弁護士は主張しています。

証拠として提出されたDNA鑑定の写真は、不自然に真っ黒に焼き付けてあり、結果がとても分かりにくいものでした。また、鑑定書に添付されている写真の一部が切り取られており、切り取られた部分に「型」が分かる情報が残っていたのではないか、と指摘されています。

冤罪を否定できない、その他の理由

実は真犯人を見たのではないかという、先述とは違う目撃証言もありました。

しかし目撃した人物と実際に起訴された被告人の容姿があまりに異なるため、自分の思い違いかもしれないと思ってしまったそうです(当時のDNA鑑定は絶対に正しいと思っていたため)。

仮にこちらの目撃証言の信用度が高まった場合、先程の目撃証言の証拠能力は否定されるでしょう。

また本件は、被告人が死刑執行の直前まで一貫して無罪を主張し続けた稀なケースでもありす。

再審請求の準備中に刑が執行されてしまった本件ですが、2021年にその再審請求も棄却され、現在は二度目の再審請求を行っています。


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